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Vol.43 処方解説(葛根湯その1)

最終更新日:2013年12月25日

サンソウニン 冬がいよいよ本番を迎えつつありますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。さて、今回からしばらくは、処方の解説をしていこうと思います。まず初回は、葛根湯(カッコントウ)について。あまりにも有名なこの処方、かぜの薬としてだけでなく、いろいろな役割をもっているのですが、それについて全てを語るにはコラム10回でも足りないくらい魅力あふれるものなのです。例えば「葛根湯医者」という落語があります。頭痛がするなら葛根湯、腹痛にも葛根湯、足が痛いなら葛根湯、目が悪いなら葛根湯・・・と、なんでもかんでも葛根湯を出し、しまいには付き添いの人にまで退屈だろうからと葛根湯を出すという、いい加減な医者の小咄のようですが、これは実はとんでもない名医の話かも知れません。葛根湯は頭痛にも、腹痛にも、足の痛みにも目の病気にも応用できるのは、嘘ではないのですから。

 葛根湯がこの世に広まったのは、時代で言うと三国志の頃にできたとされる『傷寒論(しょうかんろん)』という書物によります。日本では江戸時代から多く用いられ、特に尾台榕堂(おだいようどう)という医師がその著書でその応用を示したからだとされています。『傷寒論』には葛根湯について、かぜのような性質の病気が、身体の表面から筋肉の部位までに侵入し、寒気や発熱、頭痛、うなじや背中のこわばり、筋肉の痛みがある場合に飲ませなさい、と書いてあります。また、似たような病気で嘔吐や下痢をするときにも効果がある場合があると書いてあります。ですから基本はかぜの薬といえます。それを応用して、インフルエンザ、髄膜炎、破傷風、天然痘、麻疹、遺伝性梅毒、猩紅熱(いわゆる溶連菌感染症の一種)、丹毒(溶連菌の皮膚感染)、耳下腺炎、中耳炎、はやりめ(流行性結膜炎)、神経痛などに効果があるとされてきました。さらに現代では、副鼻腔炎、顔面神経麻痺、顎関節症、肩こり、じんましん、帯状疱疹、乳腺炎、高血圧、ナルコレプシー、重症筋無力症、夜尿症などなど、非常に幅広い病気への応用が報告されています。さて、ここまで挙げた病名には症状として、頭痛、腹痛、足の痛み、目の病気が含まれていることがわかりますね。すなわち、これを葛根湯が効く状態と見定めて処方していたとすれば、葛根湯医者はすばらしい名医なのです。上に挙げた病名の病気でも、葛根湯が効く時期や効くタイプの人は限られます。そこをどう考えるか。ここが本当の名医の目になります。葛根湯のそもそもの性質、その構成生薬それぞれの働きに対する知識、そして診察能力の高さがキーになるわけです。漢方医を名乗る者としては、真の葛根湯医者になりたいものです。そのためにも、次回もう少し葛根湯について詳しく考えてみます。

 《参考資料》 

Japanese journal of Traditional Chinese Medicine臨時増刊号「葛根湯」
                           (安井廣迪・日本TCM研究所、非売品)
類聚方広義解説(藤平健・創元社) 

《写真提供》

株式会社ツムラさんのご厚意による
 

【文責】 三重大学附属病院漢方専門医・小児科専門医・医学博士 高村光幸
 

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2013年12月25日

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