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Vol.18 感染症と漢方(その2)

最終更新日:2011年11月25日

ブクリョウ 前回コラムで、発熱は抵抗力である正気と、病原体である邪気の闘い、邪正相争(じゃせいそうそう)が起こっているためであるから、漢方ではそれをサポートするための治療を行うと書きました。具体的には、葛根湯(カッコントウ)麻黄湯(マオウトウ)がこれにあたり、発汗させて邪を取り除くという治療薬であることをコラムvol.8で少しお話していますので参考にしてください。ただ、いつでもやみくもに発熱・発汗をさせて、脱水を起こしてしまっては返って悪くなります。高熱が持続するようなときは白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)のように、知母(チモ)、石膏(セッコウ)といった、消炎解熱、渇きをとめる作用の生薬や、人参(ニンジン)のように水分を保持する生薬の配合されたものを使うことがあります。ウイルス性疾患で39度くらいの高熱がある場合には、葛根湯よりも白虎加人参湯、もしくはこれらを同時に使うようなことがあるわけです。葛根湯加桔梗石膏(カッコントウカキキョウセッコウ)という処方もこれに少し似ています。麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)も、麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)の組み合わせですから、高熱に咳や痰を伴う場合によいと思います。

 顕微鏡医学である西洋医学(コラムvol.16)の発達で、発熱の原因となる病原体は多くが明らかになっています。しかしそれら全てに特効薬が開発されているわけではありません。どうしても症状が重いときは、漢方を上手に使うことで症状が軽くなるかもしれません。

 たとえば麻疹(ましん、はしか)ならその時期に合わせて升麻葛根湯(ショウマカッコントウ)、小柴胡湯(ショウサイコトウ)、柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などが参考文献に例として記載されています。升麻葛根湯の升麻、葛根には、発疹をださせてその経過を短縮する発表透疹作用があるとされています。発疹をあえて出させて早く治す、という治療法が興味深いと思います。数年前に大学生に麻疹が流行した時期がありました。不運にも感染して発症した場合は述べたように特効薬がないので漢方薬もひとつの手段と思われますが、新米ママさんたちはお子さんが1歳になったらMRワクチン(麻疹風疹ワクチン)をすぐにきちんと接種させてまず罹患させないようにしてください。ちなみに風疹(ふうしん、三日ばしか)に対しても同じような処方の記載があります。

 水痘(すいとう、みずぼうそう)の処方であげられているのは小柴胡湯合白虎加人参湯(合とは、いくつかの漢方方剤を合わせて服用することです)や、五苓散(ゴレイサン)です。ただ水痘については専用の抗ウイルス薬があるので、漢方の出番は少ないかもしれません。

 流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん、おたふくかぜ)には葛根湯、小柴胡湯加桔梗石膏もしくは小柴胡湯合葛根湯加桔梗石膏の記載があります。

 さまざまなウイルスによるヘルパンギーナについては、小柴胡湯合葛根湯合白虎加人参湯の記載があります。個人的にもよいと思いますが、三種類の合方の漢方を子ども相手に普通の小児科医院では出しづらい面もありますし、飲んでもらえない確率も高いかな、と思ってしまいます。飲めたら絶対にいいと思うのですが。

 下痢症、とくにロタウイルスやノロウイルスには五苓散が筆頭でしょう。嘔吐が強い場合のためにこれを座薬にして投与する方法は、現代漢方家の間や一部の小児科医にはよく知られていて、非常に効果的なことが示されています。古典にはおしりから投与する方法は書いてないようですが、漢方薬の新しい知見をもたらすヒントにもなっています。

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医 高村光幸

《参考文献》
山本巌の臨床漢方(坂東正造、福冨稔明編著・メディカルユーコン)
漢方診療医典第6版(大塚敬節ら・南山堂)

《写真提供》
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福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2011年11月25日

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