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Vol.16 こころの病と漢方(その2)

最終更新日:2011年9月25日

モッコウ こころの病と漢方について、もう少し掘り下げてお話ししようと思います。そもそもこころの病に漢方なんかが効くのでしょうか。まず、心身一如ということばがあります。こころと体は切っても切り離せず、強い相関関係にあるという意味です。最近でこそ西洋医学でも心身症というような枠組みで、こころと体のバランスを同時にとらえようとしていますが(ここ数十年の話)、長い間「心身二元論」がその思想の根幹をなしてきました。漢方医学(東洋医学)はそもそも最初からこれらを分けて考えていません、むしろ分けられない思想になっています。今までにお話しした五臓六腑の概念でも、肝が気分や感情、情緒などと関係があるとでてきました。ストレスなどで肝に問題が起こると、頭痛が起きたり、目の痛み、耳鳴り、月経異常が起きたりするなど、いろいろな体の症状につながることが説明されています。また、なんらかのきっかけで肝に問題が起これば、憂鬱になったり、イライラしたり、不眠になったり、落ち着かなかったりと、こころの問題がでてきます。これらはどちらの方向にもベクトルが向くのです。卵が先か鶏が先かではなく、そもそも全てつながっているのだから、言ってみたら結果にたどり着くまでに右回りに巡ってきたか左回りに回ってきたか、というだけの違いなのです。いずれにせよ肝に問題があると考えれば、肝に働きかける漢方薬を使います。要するに、こころと体を分けずに治療するのだから、こころの病にもある程度漢方は有効である、といえるでしょう。

 個人的に私は、西洋医学は顕微鏡の医学、東洋医学は望遠鏡の医学だととらえています。西洋医学は、病理学に代表されるように、細胞レベルの形の変化を顕微鏡で確認し、細菌やウイルスの存在を証明して、科学の目を通して説明のつく原因を突き詰め、治療を発展させてきた経緯があります。したがって顕微鏡の医学です。しかし東洋医学はそのような科学技術の進歩を伴わなかったために、肉眼に見えている小さな覗き窓を介して、体内で起こっているものを推測することで治療を発展させました。顔色、声の大きさ、舌の色や形、脈の弾み方、見えている咳とか下痢とかの症状、これらの小さな小さな覗き窓だけを一生懸命のぞき込んで、生体内に壮大に広がる世界の一部を眺めることで病気をとらえようとしたのです。「生体は小宇宙である」という概念がそこに横たわっているので、まるで望遠鏡で宇宙の謎を探るかのように私はイメージしています。だから望遠鏡の医学なのです。

さて、そもそも同じ物差しを使っていないので、西洋と東洋は説明の仕方が全然違うのです。どっちが優れているか比較するのは意味がない。だけど片方だけにこだわらず、右手に西洋医学(顕微鏡)、左手に東洋医学(望遠鏡)、それでわれわれの生命という不思議な世界に挑むことで、もっと深い謎がわかればいいじゃないですか。神社とお寺と教会で同じようにお祈りをする日本人には、こういう懐の深さが元来備わっているのですから。

 文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医 髙村光幸

《参考文献》
中医学ってなんだろう「1人間のしくみ」(小金井信宏・東洋学術出版社)
心身症の診断と治療「心療内科新ガイドラインの読み方」(永田勝太郎編集・診断と治療社)

《写真提供》
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最終更新日:2011年9月25日

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