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Vol.29 相談2「下痢・お腹の調子」

最終更新日:2012年10月25日

 今回もコラムの下の方に新設された「漢方について聞きたいこと・知りたいこと」を教えてください!というコーナーにお寄せ頂いたご相談について考えてみます。

・・・「子どもが下痢になりやすい」・「お腹の調子を整える漢方を知りたい」・・・

 というご質問が寄せられたとのことです。

陳皮(チンピ) さて、我々ヒトは食物栄養素を消化器系で体内に取り入れることで生命活動のためのエネルギーを得ています。これを漢方の言葉に翻訳すれば、脾胃は気血生化の源、ということになります。え?よくわかりませんか?今までのコラムを読んで頂いていれば、これだけでピンとくる方もいらっしゃるでしょうが、まあ難しい言葉は何度聞いてもわからないものです。つまり、脾胃(消化器系)は、生命エネルギー(気血)を産生する(生化)重要な部門である、ということになります。ご相談の下痢になりやすい、とか、お腹の調子が悪い、というのは、漢方的にはあまりよい状態ではありません。消化管の働きがうまくいっていない証拠であり、長く続けば気血の産生がうまくいかなくなってしまうかも知れないからです。消化管の働きは他の臓器(臓腑)にも影響を及ぼす、と、今までアトピー喘息花粉症のところでも書いてきました。五臓六腑は互いに影響し合っているので、消化管(脾胃)の状態が崩れると他の部位(臓腑)にも症状がでたり、他の部位が悪いから脾胃の症状としてでたりと、いろいろ複雑になってきます。

 ご相談のような訴えを改善することはすなわち、消化管(脾胃)の働きを改善させることになりますが、「お腹の調子が悪い」、というのは、下痢または便秘といった、便の状態を主に指していると思いますので、まず下痢から考えていきましょう。

 下痢にもいろいろ種類がありますね。潰瘍性大腸炎やクローン病といった、炎症性腸疾患と呼ばれる慢性的で重症のものから、食中毒のような急性の消化管感染症、あるいは病気と正常の中間のような、普段から消化が悪く、ちょっとした食事内容の変化や精神的な影響を受けて下痢しやすい(過敏性腸症候群も含む)、といったようなものがよく話にでてくると思います。これらいずれの病態にも漢方が適応になることはありますが、「こどもが下痢になりやすい」ということからは、ほとんど大多数を占める、西洋医学的には病気とはいえないレベルの状態でしょう。漢方的には脾虚(ひきょ)または脾胃虚弱という状態がまず考えられます。脾胃の働きが弱まると、上方向に上がるべき脾気が下降して下痢になると考えるからです。脾胃を健やかにする漢方の代表は、六君子湯(リックンシトウ)補中益気湯(ホチュウエッキトウ)です。何度も名前が挙がっていますね。他には身体の深部に冷えがあるために下痢をする腎陽(ジンヨウ)の不足の場合があります。特に漢方では明け方に下痢をしてお腹を痛がる場合はこれを考えます。そのときには真武湯(シンブトウ)が代表的な処方です。もともと体格も小さく病弱なお子さんだと、普通六味丸(ロクミガン)で腎を補うことのほうが多いでしょう。または冷えという面で人参湯(ニンジントウ)あたりでしょうか。腹痛が目立てば小建中湯(ショウケンチュウトウ)桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)もいいかも知れません。他にはストレスを受けると下痢になるタイプです。これは肝(精神状態をコントロールするところ)が問題の本質となって脾胃を弱めてしまう場合になり、柴苓湯(サイレイトウ)とか、抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)などが考えられます。思春期で常にストレスを抱える高校生くらいなら四逆散(シギャクサン)をベースに使うほうがよいでしょう。口内炎もよくできるし下痢もするし、なら半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)でしょうか。

 とにかく消化管をうまくコントロールすることは本当に重要ですので、漢方はこのような場合に使うお薬が豊富です。安易に下痢止めなんか使うよりよっぽど意味もあって効果も十分だと思っています。

 次回は関連して便秘の話にしようかと思います。

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医・医学博士 高村光幸

《参考資料》
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
漢方方剤ハンドブック(菅沼栄・東洋学術出版社)
いかに弁証論治するか(菅沼栄著、東洋学術出版社)
三大法則で解き明かす漢方・中医学入門(梁哲成・燎原)

《写真提供》
株式会社ツムラさんのご厚意による

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2012年10月25日

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