福井市結婚・子育て応援サイト「はぐくむ.net」 福井市結婚・子育て応援サイト

福井市結婚・子育て応援サイト福井市結婚子育て応援サイト「はぐくむ.net」

Vol.14 疳の虫と漢方

最終更新日:2011年7月25日

チョウトウコウ 『疳の虫かんのむし)』というのは、どういう意味でしょうか。最近あまり耳にしないような言葉ですが、小さい子が夜泣きやかんしゃく、ひきつけなどを起こすことで、現代でも確実に存在します。なにも本当に虫が存在するということではありませんが、疳の虫とよばれる病態(病気とよぶには憚られますね)は、現代っ子ももっているはずです。何を隠そう、うちの子も疳の強い子で、眠れない当直から帰って家で寝ようと思っても夜泣きで全然寝られなかったり、かんしゃくもちで怒るとキーキー言って泣いたりしました。当時漢方が手軽に使えなかったので、○○救命丸か○○奇応丸というのを飲ませた覚えがあります。意外と効いたなあという日があったように思います。手元に「子育ての医学」というわかりやすく良い本がありますが、ここにも「疳の虫」の項目があって、昔は虫封じをしたとか、孫太郎虫(調べてみるとヘビトンボの幼虫だって!)という薬があったとありますし、「救命丸と奇応丸」、という項目もあり、有名な宇津救命丸はジャコウ、ゴオウ、レイヨウカク、ギュウタン、チョウジ、ニンジン、オウレン、カンゾウが含まれていて(HPでも確認)、樋屋奇応丸はジャコウ、ユウタン、ニンジン、ジンコウ(HPにはゴオウも含まれるとあります)だそうです。医療用漢方エキス剤にも、植物製剤であるニンジン(人参)やオウレン(黄連)、カンゾウ(甘草)は多くに含まれています。ジャコウ(麝香)やゴオウ(牛黄)などの動物生薬は、エキス剤にはほとんど含まれていません。麝香はジャコウジカから取るのですが、なんせ現在は絶滅危惧種としてワシントン条約にひっかかるので、大変貴重なものです。ムスクの香りとはこの麝香のことですが、本来の麝香は意識障害や痙攣に効かせる強力なお薬です。整髪剤とかのムスクの香りって、そんなに目が覚めるような感じじゃありませんね。

 さて、○○救命丸などは生薬を使っているものの、漢方薬とは言わずに、民間薬とよばれる部類のものです。漢方薬で疳の虫といえば、抑肝散(ヨクカンサン)です。医学界では抑肝散が認知症の周辺症状(妄想、徘徊、不眠、暴力などの精神症状や行動障害)に効果があるとして有名になってきていますが、もともと神経過敏な小児用の薬です。構成生薬はサイコ(柴胡)、ジュツ(朮)、ブクリョウ(茯苓)、センキュウ(川芎)、トウキ(当帰)、チョウトウコウ(釣藤鈎)、カンゾウ(甘草)で、さきほどの救命丸などとは全然違いますが、夜泣きやひきつけといった、疳の虫に効かせるための薬なのです。うちの子の話ばかりで恐縮ですが、よく歯ぎしりや寝言がうるさいので、抑肝散を飲ませて寝かすとましになります。別のお子さんで、アトピーで痒くて眠れないというので、眠前のみ抑肝散を飲ませて、睡眠状態がよくなったこともあります。でも、このお薬をより良く効かす秘訣は、母子同服といって子どもと一緒にお母さんも同じ薬を飲むことです。お母さんと子どもの関係の密接性、重要性を思い知らされる話ではありませんか。子どものイライラは親のイライラを反映しているのではないでしょうか。心当たりのあるお母さんも多いのでは?

 抑肝散だけではなく、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)とか、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)などが、同じような分野でよく使われる処方だと思われます。

 文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医 髙村光幸

《参考文献》
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
子育ての医学(馬場一雄・東京医学社)
小児疾患の身近な漢方治療シリーズ(日本小児漢方懇話会記録集・メジカルビュー)

《写真提供》
株式会社ツムラさんのご厚意による

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2011年7月25日

▲ ページの先頭へ戻る