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Vol.12 母体と漢方(2)

最終更新日:2011年5月25日

ジオウ 五臓六腑(ごぞうろっぷ)の話を今回は取り上げます。

 漢方で言う五臓六腑とは、すなわち肝・心・脾・肺・腎の五臓と、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の六腑です。肝心要とか肝腎要などといいますが、五臓六腑の働きは我々の生命活動にとってとても重要なのです。これは現代医学で言う肝臓や腎臓などと直接対応するわけではないので注意が必要です。漢方での肝は、全ての臓腑の「気」の巡りを調節するコントロールセンターで、感情にも関係が深い臓とされます。たとえばストレスが強くかかった状態では、肝の働きに影響がでて、気がうまく巡らずいろいろな症状がでます。また腎は、成長や発育などを司る臓として、生命エネルギーと深く関わっていると考えられています。腎の活動は年齢とともに充実し、加齢とともに衰えるわけです。流行のアンチエイジングなどというものは、腎の力を保つことと同義でしょう。そして腎は、生殖にも関係しています。前回不妊に関して、「月経を調整して」、妊娠できる体にもっていくことに漢方を使う、「経を整える(調経)」というのが基本になる、と書きましたが、毎月月経という出血のある女性にとって最も重要な要素である「血(けつ)」に密接に関わる臓は肝であり、生殖に関わる臓は腎なのです。まさに妊娠(女性特有の能力)にとって肝と腎は肝腎要というわけです。肝と腎の働きが弱いと、月経不順になったり、排卵が起きなかったりして妊娠が成立しません。この場合、六味地黄丸(ロクミジオウガン)八味地黄丸(ハチミジオウガン)を用いることがあります。また、ストレス等が原因で肝の気のコントロール機能が悪くなると、これも妊娠を妨げます。長期間不妊治療などで苦労している場合なども、肝の気の巡りが悪い可能性があります。このようなときは、加味逍遥散(カミショウヨウサン)などが考えられます。前回挙げた当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は、「血(けつ)」の巡りが悪く、子宮や骨盤内に悪い血液が溜まってしまう子宮内膜症や子宮筋腫、強い月経痛などの症状に用いることがあります。温経湯(ウンケイトウ)という、いかにも冷えて調子の悪い月経を、温めて改善させるような名前の方剤を使うこともあります。冷えは「血(けつ)」の巡りを悪くさせます。女性に冷えは大敵とよくいわれていますが、漢方では温めて改善するお薬がたくさんあります。残念ながら、西洋医学に温める薬はありません。

 六味地黄丸(ロクミジオウガン)という処方ですが、これは元々「小児薬証直訣」というものが原典になっている小児科領域の薬です。腎は成長や発育を司る臓であると言いましたが、発達が遅い、生まれつき体の弱い子は、漢方的に腎虚(じんきょ)といって、持って生まれた生命力が弱い状態と考えます。この腎の虚しているもの(不足しているもの)を補うのが、この薬の本来の目的です。しかし、私の外来では、比較的高齢の方の耳鳴りやめまい、ふらつきなどに処方し、よい結果を得ていることが多く、これは加齢とともに起こる腎虚を治しているものと思われます。子ども、妊婦、老人にまで同じ処方を使って症状を改善できるのは、漢方の魅力の一つでもあります。

 文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医 髙村光幸

《参考文献》
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
いかに弁証論治するか(菅沼栄著・東洋学術出版社)
漢方方剤ハンドブック(菅沼伸監修・菅沼栄著・東洋学術出版社)

《写真提供》
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電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2011年5月25日

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