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Vol.5 気管支喘息と漢方(その1)

最終更新日:2010年10月25日

麻黄(マオウ) さて、今回は、気管支喘息について考えてみようと思います。

 気管支喘息と一口に言っても、成人の喘息と小児の喘息には違いがあり、特に乳児喘息となると、定義もいまだ混沌としており、難しいところです。よくわからないままに、「お子さんは喘息ですね」といわれ、いろいろなお薬を出されているお母さんもいらっしゃるでしょう。少し難しい文章ですが、気管支喘息とは、「即時型アレルギーに由来する炎症細胞の浸潤により引き起こされる気道の慢性炎症。炎症細胞から放出されるサイトカイン、ロイコトリエンなど種々の活性物質により気道平滑筋収縮、粘膜浮腫、分泌亢進、上皮の破壊などが生じ呼吸困難を呈する。呼吸困難発作は繰り返し起き、炎症の修復過程で気道のリモデリングが進行する」病気であると、参考文献には書いてあります。医師向けの本なのでこのような記載ですが、これを乱暴かつ簡単に言い換えると、「アレルギー反応によって空気の通り道に白血球などの細胞がたくさん集まってくる。これらの細胞がいろいろな刺激物質を出すため、空気の通り道にある筋肉を締め付けたり、粘膜をむくませたり、内側を守っている細胞などを壊してしまう。そうなると空気が通りにくくなって息が苦しくなる。アレルギー物質にさらされると、息が苦しくなる発作は繰り返し起こるので、その度に通り道が荒れ、その都度修復するのだけれど、元のきれいな道とはちょっとずつ形が変わってきてしまう」病気ということです。わかりましたか?

 アトピー性皮膚炎のときにも出てきましたが、アレルギーと切っても切れないのがステロイドです。私が研修医の頃よりも、現在の小児喘息の治療はまさにステロイドが中心的な役割を果たすようになっています。小児気管支喘息治療・管理ガイドラインというものが定期的に刊行、改訂され、症状の重さや年齢によって、治療のステップが階段式に示されています。漢方を処方する医師として残念なのは、その治療ステップに漢方は含まれていないことです。そもそも漢方は個人個人の体質をみて処方するので、この病気にはこの漢方、という図式は定まらないことは、このコラムでも度々述べてきました。したがって、無理もないことですが。しかし、アレルギーの専門の医師たちにも、漢方薬を併用している方は多くいらっしゃいます。気管支喘息にも、漢方は有用と考えます。

 西洋医学的な喘息治療では、発作が起こったときに発作自体を抑えるお薬と、普段から発作が起きないようにしておくためのお薬とを、分けて使います。漢方も、同じような考えで処方を使い分けます。つまり、発作が頻繁に起こっているときには麻黄剤(マオウを主薬とする薬剤)を用い、治まっている時期には柴胡剤(サイコを主薬とする薬剤)を用いる、などが一般的です。

 麻黄という生薬には、咳を止めたり、気管支を拡げたりする作用があります。私が非常勤で複数勤める小児科医院では、麻黄の含まれる麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)をとてもよく処方しています。喘息とは言わず、聴診器で聞くとわずかにゼロゼロいっている場合や、咳が中心の風邪症状のお子さんにも、よく出しています。私自身も花粉症のときによく服用するのですが(花粉症の話もいずれやりますね)、比較的甘い味で、子どもでも嫌がらず飲んでくれることの多い処方です。類似処方に五虎湯(ゴコトウ)、小青竜湯(ショウセイリュウトウ)などがあります。小青竜湯も私自身よく服用しますが、酸っぱい味が飲みにくいという人もいます。しかし、これらは服用して数分から数十分で効果が現れます。漢方はゆっくり効く、というイメージしかない方、そんなことはないのですよ。

 発作を出にくくする柴胡剤としては、柴朴湯(サイボクトウ)などがよく使われます。柴朴湯という処方は、小柴胡湯(ショウサイコトウ)に半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)を合わせた処方で、柴胡には炎症を抑える作用や、抗アレルギー作用が、半夏(ハンゲ)や厚朴(コウボク)には咳や痰を止める働きがあるとされています。麻黄も柴胡も入った神秘湯(シンピトウ)という処方も、その構成から、喘息に用いられます。運動誘発性喘息とよばれるものに、神秘湯がよいという報告もあります。体質改善という意味で、小建中湯(ショウケンチュウトウ)とか、補中益気湯(ホチュウエッッキトウ)という、アトピーの時にも名前の出てきた処方も、よく用いられます。

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医 高村光幸

《参考文献》
今日の診療プレミアムVol.19 (C)2009医学書院
小児疾患の身近な漢方治療5(日本小児漢方交流会・メジカルビュー社)
弁証図解漢方の基礎と臨床(高山宏世編著、三考塾)
漢方ポケット図鑑(宮原桂編著・源草社)
山本巌の臨床漢方(板東正造編著・メディカルユーコン)

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最終更新日:2010年10月25日

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