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Vol.57 妊娠と漢方(その4)

最終更新日:2016年3月24日

 今回は産褥産後の問題を考えます。

 いざ分娩時となっても子宮の収縮が弱い場合、微弱陣痛といって分娩が遷延し、母子ともに悪影響がみられる状態があります。現代医学的には、判明した時点で陣痛促進薬を点滴静注しますし、場合によっては帝王切開が選択されることもあるでしょう。しかし、かつては虚弱体質で運動不足の人は、このような微弱陣痛や難産を起こしやすいとされており、これを補うために当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などを服用させることで予防しようという考えがありました。当然現代でも、十分な体力を持たない妊婦さんには、これらの漢方薬を使うことで出産に耐えうる体力を補うことは期待されます。

 無事出産がうまくいっても、産後になんとなく体調が思わしくない状態が続く、いわゆる「産後の肥立ちが悪い」場合、漢方では瘀血(おけつ)と考えて治療することがあります。その代表的な漢方は、芎帰調血飲(キュウキチョウケツイン)です。産後の一切の諸病に用いたという方剤で、産褥熱、子宮復古不全、産後神経症、乳汁分泌不全などに応用されます。マタニティーブルーといった言葉がありますが、産後に精神的にも肉体的にも疲労し、消化機能が衰えたり自律神経失調症状が現れたりすることは、決して珍しくありません。このような状態に対する漢方の第一選択薬が、芎帰調血飲となるわけです。芎帰調血飲は、乳汁の産生と分泌を促進するホルモンであるプロラクチンの分泌を促すことがわかっており、まさに産後に適した処方であることが現代医学的にも証明されつつあるわけです。乳汁の分泌不全には、他にも葛根湯(カッコントウ)加味逍遥散(カミショウヨウサン)、または十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)が使われることがあります。ときに授乳もしなければならない産後には、漢方をうまく使うことで体力を回復できる可能性があります。
 

 さて、2010年の6月より5年以上にわたりコラムの連載を続けてきましたが、諸事情により今回で最終稿とさせていただきます。これまでに書いてきたことは漢方の魅力の一部分でしかありませんが、きっとよりよい母と子の生活へと結びつくヒントは、ところどころ触れられたのではないかと思います。ぜひ、漢方のよいところを活用してみてくださいね。

《参考資料》 
山本巌の臨床漢方(板東正造ら・メディカルユーコン)
はじめての漢方治療(後山尚久編集・診断と治療社)
古典に生きるエキス漢方方剤学(小山誠次・メディカルユーコン)

 

【文責】 三重大学病院漢方専門医・小児科専門医・医学博士  高村光幸 
 

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2016年3月24日

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