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Vol.47 処方解説(五苓散)

最終更新日:2014年5月25日

サンソウニン 今回は五苓散(ゴレイサン)について。やはり『傷寒論』および『金匱要略』という古典に記載されています。とても応用範囲の広い処方ですが、母と子のコラム、ということでいえば、小児科領域では急性胃腸炎・嘔吐下痢症に使う漢方薬として有名です。小児では嘔吐下痢は非常に頻繁にみられる症状で、ちょっとした風邪でも吐く子はいます。とくにノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど、特効薬のない症状の強いウイルス性胃腸炎に対しては、吐き気止めで様子をみるか整腸剤を服用させて、ダメなら点滴、治まらなければ脱水で入院、というのが一般的な治療コースで、そのような処置で小児科に何度もかかられるお子さんもいらっしゃるでしょう。このような症状に五苓散は使えます(以前vol.18にも少し書きました)。

 もともと五苓散は水分を欲して尿量が減る状態に使うのが主目的で、水逆といって、水分を摂りたがるのに飲むとすぐ吐き出す症状や、水のように下痢をするなど、身体の水分の偏在によって起こる症状に用いられてきました。日本漢方では水毒と呼ばれることもあります。嘔吐を繰り返すようなときは、胃腸の中に余分な水分が貯留していて、しかし身体の細胞には必要な水分が足りないという、バランスの悪い状態に陥っています。そこでそれを五苓散が整えるわけですが、とても不思議な作用があって、いらない水分が多すぎればそれを取り去り、必要な水分が不足していればそれを保持するような働きをするとされています。そのため、嘔吐下痢症などのときに服用させると、そのまますんなり嘔吐が止まることもあれば、一度大量に吐いて、その後すっきりしたように回復する、ということも見受けられます。これはおそらく、これ以上水分を出させないほうがよいときは保持に働き、いらない水分を出してしまうほうがよいときは出してしまう、というバランス調整のなせる技なのだと思います。実はこのような独特の作用について、科学的に証明されそうな話題が近年でてきました。我々の細胞には、その細胞膜にアクアポリンと呼ばれるタンパクがあり、それが水の取り込みに関与していることが判明しました。そして五苓散がこのアクアポリンに作用して、異常な水の移動を調整するというのです。このような事実が発表されたとき、漢方家たちは皆、驚きとともに漢方の魅力に改めて魅せられました。まさに先に述べたような、五苓散の水分調整の妙とつじつまが合う話であるばかりでなく、このような分子レベルの作用を、何千年も前の先人達は実際に臨床応用していたわけですから。

 五苓散は他に、頭痛、神経痛、浮腫、脳浮腫、慢性硬膜下血腫、めまい、透析にまつわる症状、二日酔いなど、むくみや水のバランス異常に関係するとみられる諸症状に応用されています。

 《参考資料》 

五苓散シンポジウム記録集(国際東洋医学会日本支部) 

《写真提供》

株式会社ツムラさんのご厚意による
 

【文責】 三重大学附属病院漢方専門医・小児科専門医・医学博士 高村光幸
 

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2014年5月25日

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