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Vol.40 漢方に含まれる生薬について(その1)

最終更新日:2013年9月25日

ソウジュツ さて、今回は漢方薬に含まれる生薬についてお話しますが、その前に、みなさんに是非知っておいて頂きたい事実があります。

 現在の日本の医療制度では、約160種類の生薬について保険薬価が定められており、我々は健康保険によってこれらから成る処方を受けることができます。ただこの保険薬価が非常に安く(しかも年々下がる)、高騰し続ける生薬原価(生ものですので値段が変動しますが普通は上がります)との釣り合いがとれておらず、生薬卸問屋や製薬メーカーの苦労はかなり切実なものとなっています。一例を挙げますと、煎じ薬で小柴胡湯(ショウサイコトウ)を処方するとして、その薬価は現在1日あたりで約121円となります。生薬の中でも比較的高価な柴胡(サイコ)や人参(ニンジン)が入ることでもこの程度の値段です。同じ小柴胡湯をエキス剤にすると、その薬価はおよそ182円~260円と、かえって高くなってしまいます。エキス剤よりも効能の高いと考えられる煎じ薬で処方するのに、処方する側も手間がかかる上に、エキス剤よりも薬価が安いことになってしまいます。加えて、例えばカプセル剤であるインフルエンザ薬タミフルの薬価は1日あたり約618円です。大量生産のできる西洋薬と比較しても、薬価はさらに差がついてしまうのです。これほど薬価が安いと、誰も生薬メーカーや生薬を扱う薬局をやりたがりません。医療は儲けるためにやっているわけではない、というのはもちろんですが、採算がとれなければどんな事業でも衰退してしまいます。医療費が高騰しているとマスコミや政府は声高に吹聴していますが、その本質は国民の目には見えていません。莫大な資金と世界中のネットワークで席巻する外資系製薬メーカーを前に、日本の漢方メーカー、生薬メーカーは巨象の前のちっぽけな蟻のような存在です。この状況は一刻も早く打開しなければなりません。自由に、しかも安価で生薬が手に入る恵まれた状況は、もうこの先長くは続かないのではないかと懸念しています。皆さんも是非この事実をご理解頂いた上で、天然の恵み、人類の知恵である漢方薬を、自然と歴史への敬意を持って十分にご活用下さい。

 愚痴が長くなりましたがそろそろ本題に入ります。生薬は構造が明確な化学医薬品とは異なり、有機化合物や無機化合物をふんだんに含んでおり、非常に複雑な薬理作用を持っています。それに単独で使うより組み合わせで使うことで、お互いの薬効が微妙に変化するという特異な性質をもっています。有名な葛根湯(カッコントウ)に含まれる葛根のデンプンが、同時に配合される麻黄(マオウ)の成分エフェドリンの溶出を助け、さらにエフェドリンが水蒸気とともに揮散するのを抑えるという報告があります。つまり、麻黄単独よりも葛根と組み合わせて煎じることで、その麻黄の効力がしっかり発揮されるというわけです。本題が全然進みません。次回もこの続きで。

 《参考資料》 

医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
専門医のための漢方医学テキスト(日本東洋医学学会学術教育委員会編集) 

《写真提供》

株式会社ツムラさんのご厚意による
 

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医・医学博士 高村光幸
 

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2013年9月25日

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