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Vol.35 相談6「肩こり・頭痛(その2)」

最終更新日:2013年5月1日

・・・  最近よく肩がこるようになりました。また、以前はなかったのですが、頭痛を感じるようになりました。マッサージなどをしてもあまり症状が変わりません。肩こり・頭痛に効く漢方はありますでしょうか?    ・・・ 

ソウジュツ 
前回の続きです。

肩こりを漢方的に考えると、身体にとっての大事な要素である気・血・津液(水)の、どれかが、もしくはいくつかが「停滞している」ということになりそうだとしました。つまり、巡るべきものが滞ることで不快感や痛みが起こるというわけです。葛根湯、もしくは葛根湯加朮附湯(カッコントウカジュツブトウ)桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)の名前を挙げました。葛根湯は日本人ならほとんどが知っている有名なかぜの薬です。この処方の原典には、項背強ばる事うんぬん、という、うなじから背中にかけてこわばりがあるかぜの初期に使えとの指示文があります。これは葛根が首筋の筋肉の硬直を緩和する働きがあるためです。これを肩こりに応用しているのですが、これは項背部から肩においてうまく動いていない血や津液を調整する作用によります。葛根加朮附湯はさらに浮腫状にこわばりがある場合に、葛根湯に朮と附子という水の滞りをさばく生薬を加えたものです。似たもので桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)という処方もよいかも知れません。これは桂枝湯という別のかぜ薬を元にしています。防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)でむくみをさばくのも有効かもしれません。水の質が変化してしつこい慢性化症状になれば、二朮湯(ニジュツトウ)も候補です。水よりも血の滞りが主体と考える場合には桂枝茯苓丸桃核承気湯を使うこともあります。ただ現代社会においてはその根幹にストレスがある場合が多く、これには加味逍遥散(カミショウヨウサン)大柴胡湯(ダイサイコトウ)といった、肝(情緒に関係する部位)に働きかける方剤がメインになる場合もあるでしょう。

このように、一口に肩こりといってもその現象の背景にある特徴を見定めて処方を決めなくては改善をもたらせません。漢方が効かないのではなく、うまく病態を把握できないまま肩こりだからこの処方、では、効くはずのものも効かないというわけです。

 

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医・医学博士 高村光幸
 

《参考資料》 

漢方診療ハンドブック(桑木崇秀・創元社)
いかに弁証論治するか(菅沼栄著、東洋学術出版社)
山本巌の臨床漢方(坂東正造、福冨稔明編著・メディカルユーコン)


《写真提供》

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最終更新日:2013年5月1日

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