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Vol.27 漢方基本編(その3、煎じ薬とエキス剤)

最終更新日:2012年8月25日

黄連(オウレン) 漢方薬は本来、煎じて飲むタイプのものです。生薬をグラム単位で量って、それをグツグツと煮込んで出た煮汁を、回数分に分けて飲むわけです。したがって○×湯、という名前になっているわけですが、なかには△○散、とか□○丸、という名前のものがあります。有名なところでは加味逍遥散(カミショウヨウサン)当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)八味地黄丸(ハチミジオウガン)などです。△○散は粉末で服用するもの、□○丸は粉を蜜で丸めて仁丹のような粒にして服用するものです。しかし、現在健康保険にて処方される漢方薬はほとんどがエキス製剤という、顆粒もしくは細粒の薬です。○×湯も△○散、□○丸も全部顆粒、もしくは細粒の形状で処方されます。これは、煎じ出たエキスを霧状にして顆粒の元に吹きかけて乾かし、または凍結乾燥させて乾かし、粉にしているのです。一部の処方は、錠剤やカプセルの形状にされているものもありますが、全体でみると少数です。

 煎じ薬とエキス剤、どちらにもメリット、デメリットがあります。薬効でいえば、やはり煎じ薬が一番よいでしょう。しかし生薬は生ものです。きちんと保管しないと、カビが生えたり変質したりしますし、産地によって含有成分量も異なります。ちゃんと煎じないとその煮汁の薬用成分の濃度も一定ではありません。煎じ液も日持ちがしないので、毎日服用分をせっせと煮出さなければなりません。現代人の分刻みの生活にはなかなか合いませんね。その点エキス剤は保存も便利、持ち運びも便利、量や濃度も日本メーカーの作るエキス剤であれば厳密に一定に保たれています。いつでもどこでも、好きなときに飲めるので、生活の中で負担になりません。しかし、エキス剤の欠点はその中身の微妙な調節ができないという点にあります。

 たとえば、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)という煎じ薬は、黄連が3~9g、オウゴンが6g、オウバクが6g、サンシシが9gというのが標準ですが、黄連の量はその症状で少なめの3gにしたり9gと多くしたりと、細かい微調整ができます。しかし、ある会社の黄連解毒湯エキスは、いつでも黄連2g、オウゴン3g、オウバク1.5g、サンシシ2gで必ず1セットなので、黄連を倍にしようと思うと、他の生薬も倍の量が含まれることになるのです。また、煎じ薬なら他の処方を足すとき、たとえば黄連解毒湯二陳湯(ニチントウ)茵陳蒿湯(インチンコウトウ)を足したい(ややマニアックな処方ですが…)、となると、先の生薬にハンゲ、チンピ、ブクリョウ、ショウキョウ、カンゾウ、インチンコウ、ダイオウ、をそれぞれ加えるのですが、どうせ煎じるのは1回ですから、できる煮汁の量は特に変わりません。ところがエキス剤だと、黄連解毒湯エキス二陳湯エキス茵陳蒿湯エキスの3種類を1度に飲むので、粒の量が3倍になります。毎食前に3袋の粉だと、大人でも文句を言われます(笑)。

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医・医学博士 高村光幸

《参考資料》
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)

《写真提供》
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電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2012年8月25日

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