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Vol.22 子どものトラブルと漢方(その4、月経)

最終更新日:2012年3月25日

牡丹皮(ボタンピ)

 月経にまつわるトラブルとして、思春期女児の場合には月経不順や無月経、月経痛があるでしょう。小児科的な視点でいくと、月経発来の年齢になっても月経がこない場合には、性機能低下症などの疑いもありますので、専門的な検査などが必要です。女児の場合12歳までにほとんどが思春期発来をみるとされますから、それ以降にも二次性徴がみられなければ念のため検査の対象です。また、満18歳に至っても初経をみない場合は原発性無月経として特別な治療が必要です。

 さて、思春期あたりでは月経不順もある程度しょうがないことですが(初経から3~4年を経て規則的な月経周期が確立されるため)、漢方のコラムですので調経(月経にまつわる治療の総称)についてお話しします。月経にまつわる諸問題は、いわゆる気血水(きけつすい、水は津液ともいう)の血に関係が深いのは文字のごとくですが、ストレス社会の現代では気の問題も大いに関係しますし、若い女性はとくに水の問題も関係しています。

 血とは、現代医学の血液におおよそ相当すると考えてよいでしょう。身体に栄養や潤いを与えるものととらえます。不足すれば貧血、停滞すればうっ血、おおまかにこのようなイメージでよいでしょう。不足する状態を血虚(けっきょ)といい、フラフラしたり動悸がしたり、肌に潤いがなくなるほか、月経が遅れたり月経がこなかったりします。停滞する状態を血瘀(けつお)もしくは瘀血(おけつ、血瘀の結果、瘀血ができます)と呼びますが、流れが悪いので痛みがでます。月経に関して言えば、主に月経痛や血の塊が出る状態です。このような血の問題に対しての基本処方として四物湯(シモツトウ)があります。これを単独で使うというよりは、ベースにしていろいろ組み合わせるのがひとつの方法ですが、四物湯には補血調血(血を補って巡らす)作用があるので、血虚や血瘀の状態に適したものと言えます。たとえば貧血の状態に処方したり、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)と組み合わせて月経痛やむくみに使ったりすることがあります。血瘀の状態には、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)という処方も有名です。これも月経不順や血塊が出る状態、月経痛、思春期ではありませんが子宮筋腫などに用いられます。

 ストレス負荷で気分の変動が大きい場合は、気の巡りが悪くなっています。このような状態の月経不順には加味逍遥散(カミショウヨウサン)を加えます。胸や乳房が張ったり痛んだりする症状にも効果がある場合があります。ほかに私がよく使うものに四逆散(シギャクサン)があります。イライラして食欲や便通に問題がある月経痛、月経不順に他の処方と重ねて用いたりします。同じような状態で、女神散(ニョシンサン)も用います。

 水の問題が合併する場合は、先に述べたようにむくみがあったりするので、当帰芍薬散が代表でしょう。

 冷えが目立つ場合には温経湯(ウンケイトウ)などを用います。文字通り温める方向の処方です。

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医・医学博士 高村光幸

《参考文献》
山本巌の臨床漢方(坂東正造、福冨稔明編著・メディカルユーコン)
漢方方剤ハンドブック(菅沼伸監修・菅沼栄著・東洋学術出版社)
いかに弁証論治するか(菅沼栄著・東洋学術出版社)
三大法則で解き明かす漢方中医学入門(梁哲成著・燎原書店)

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電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2012年3月25日

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