近年、育児環境は一昔前とは大きく変わりました。男性の育休取得や育児参加の増加に伴い、家庭の生活リズムや考え方も変化しています。さらにSNSやAIの普及により、情報を簡単に検索できる時代になりました。こうした社会環境の変化の中で、母乳育児率の低下を感じる場面も増えています。
出産前から「みんなで育てたいのでミルクにします」と話す方や、出産直後に「思ったより出ないので母乳をやめます」と早々に選択される方も少なくありません。もちろん、ミルク栄養でも赤ちゃんは十分に育ちますし、決して「ミルクはダメ」ということではありません。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。人間は生物学的に「哺乳類」です。母乳は赤ちゃんの成長や免疫、脳の発達を支えるために、何百万年もの進化の過程で「ちょうどいい」バランスで作られています。今日はその「母乳のすごさ」について、改めてお話ししたいと思います。
「母乳のすごさ」とは??
1. 赤ちゃんの免疫を守る
母乳には分泌型IgAやラクトフェリン、オリゴ糖など、赤ちゃんの免疫機能を補う成分が豊富に含まれています。これにより、感染症に対する抵抗力が高まります。そして、免疫機能をつかさどる腸内環境も整います。
2. 脳や神経の発達を支える
母乳にはDHAやARAといった神経発達に重要な脂肪酸が含まれており、視覚や認知機能、言語能力の発達にもよい影響があると言われています。
3. 消化しやすく、体に優しい
母乳は赤ちゃんの消化器官に合わせて設計されており、消化吸収がスムーズです。便が柔らかくなりやすく、腸内細菌叢の形成にも役立ちます。
4. 母子の絆を深める
授乳中のスキンシップや抱っこの時間は、母子双方のオキシトシン分泌を促し、安心感や愛着形成を促してくれます。赤ちゃんの成長に伴い、見つめあい会話をするように授乳中の二人の姿が変化していきます。
5.母体へのメリット
- 子宮の回復を助ける
- 体重回復をサポート
- 長期的には乳がんや卵巣がんのリスク低下にもつながる
- 授乳によるオキシトシン分泌で、育児中のストレスがやわらぐ
いかがでしょうか。母乳育児は、赤ちゃんだけでなくお母さんの体や心も支えてくれる、まさに「母子双方に優しい方法」です。完全母乳でなくても、ミルクとの混合栄養でも立派な母乳育児です。母乳育児のメリットは、お母さんにも赤ちゃんにもちゃんと伝わります。
初めての育児では、母乳育児が軌道に乗るまで「大変」と感じることも多いかもしれません。そんなときに大切なのは、すぐに「母乳をやめる」と決めてしまわず、早めに助産師に相談することです。私たち助産師は、母乳育児が軌道に乗るまでのサポートや、ちょっとしたコツをお母さんに提供することができます。さらに行政も産後ケアで、お母さんと赤ちゃんを支えてくれます。
母乳のすごさや母乳育児のメリットを理解したうえで、自分に合った方法を安心して選び、無理なく続けられることが一番大切です。まずは、近くの助産師を検索してみてくださいね。
助産師ネットワークたね 竹本由希
(出張専門助産所 たけのこ相談room)













