人間は誕生後からしばらくは母乳やミルクの栄養のみで成長していきます。
はじめはおっぱいがなかなか思うように出なかったり、上手く吸ってくれないなど授乳をすることが大変だったりした方も、徐々にスムーズに授乳できるようになり、授乳の間隔があいてきて余裕が出てきたころ、今度は離乳食という食事で栄養を補給することが必要になります。
食事とは単に栄養を摂取するという事だけでなく、楽しく食事をして体にも心にもたくさんの栄養が満たされるようにすることが大事だと思います。
昭和時代に子どもだった自分は聞いたことない「食育」という言葉が平成になり広まり「食べる」ということが改めて見直されました。
昭和時代がモチーフの「サザエさんの家の食卓」はいつも家族全員がそろってサザエさんやフネさんが作った食事を楽しく会話しながら食べている光景が思い浮かぶと思います。
そのような時代から核家族や夫婦共働き世帯が増え、食事のスタイルが変化してきました。
今では簡単に食べられるものが増えてきており、ありがたいこともたくさんあります。忙しく食事の用意が大変な時、体調が悪くて料理するのが困難な場合などはとても助かります。ただ、そのようなものばかりでは食べるものに偏りができたり、十分な栄養を補えなかったりします。
子どもの食事で意識したい「こ食」というワードがあります。
「孤食」家族が不在の食卓で、ひとりで食事する
「固食」同じものばかり食べる。(カレーが好きだから毎日のようにカレーを食べる偏食)
「個食」家族それぞれ別メニュー
「子食」親は別の事をしていて、子どもだけで食事をさせる
「小食」少ししか食べない
「濃食」味付けが濃いものを好んで食べる
「粉食」小麦粉などを使った、あまり噛まないで済む粉ものばかりを好んで食べる
「戸食」外食ばかりする
「虚食」食べる意欲がなく、全く食べない
このような「こ食」をなるべく避けたいものです。
離乳食を喜んで食べるか食べないかは、少なからず親などの周りの人の影響を受けると思います。
離乳食が始まるころ(5~6ヶ月くらい)になると子どもは大人が食べている様子をじっと観察します。その時においしそうに食べていれば「パパやママがもぐもぐしているのは何だろう?ニコニコしている。私も真似してみたい。」と思って自分も口をもぐもぐして食べる練習をしたり、自然によだれが垂れてきます。近くで食べるとこれちょうだいと手を出してきたりします。
そのような好奇心が始まるころに離乳食を始めるとスムーズにいきやすいといわれています。
「これはかぼちゃだよ」「これはおさかな」など実際に自分が食べる食材をみせてあげたり、食べ物の絵本をみせてあげたりすることも食事に興味を示しやすいと思います。
毎日忙しいと思いますが、食事は一生ものなので、今一度自分たちも含め、食べることは命を頂くことであり、感謝して「いただきます」「ごちそうさま」と心からいえるといいですね。
離乳食の進め方や量などは個人差がありますし、最初は嫌がることもあるかもしれませんが、何度もトライすることで食べられるようになったり、味を変えることで食べてくれたりします。
育児というものは試行錯誤の繰り返しだと思いますが、たくさんの子どもがお腹も気持ちも満たされて、食事の時間が楽しみ!となって欲しいと願っております。
最後に「食育」という言葉は明治時代からあったそうで、ご存じかもしれませんが福井出身の石塚左玄が日本で初めて提唱した方です。(福井市のホームページに詳しく掲載されています)
助産師 加藤菜津子