助産師の三嶋です。
暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
先日ある講演会がありましたので紹介します。
講師は助産師、冨田江里子さん。彼女は1997年からIKGS緑化協会現地調査員として、フィリピン・スービックに滞在しています。2000年に無料診療所(助産所)を開設しました。地域住民の妊産婦診察及び出産、また病院にいけない人たちの一般診察もしています。
フィリピンではお金がなくては病院にかかれません。異常があって病院に搬送してもお金を支払わなければ治療してもらえない。その結果、救える命でもなくなることがあります。
また公立の病院は慢性的な人手不足、予算不足で、ずさんな処置をされ後遺症を残す産婦や命を落とす母子がいるといいます。
そんなフィリピンで今異変が起きているのだそうです。アトピーの子どもの増加、妊娠高血圧症、成人病などの増加です。それは何故?と思うでしょう。フィリピンには日本のような食品規制(添加物、加工食品)がありません。先進国で販売禁止の添加物や期限切れになった食品を再包装して途上国で再販売されるそう。米より安価で、毎日3食インスタントラーメンということもありうるそうです。
昔はないなりに健康が保てていたはずなのに・・・。日本人だって昔は自給自足の生活をしていた(肉や魚は豊富ではなかった)のに貧血にもならず元気な子どもを産んでいたと思います。食が豊富になりすぎて多種多様の病気が発症するんでしょうね。
雑談の中で冨田さんが話しておられたことに、私は驚きました。
日本では現在少子化が進み、成人女性が生む子どもの数が1人から2人になっています。そんな中で「産めよ育てよ」と国はいろいろな政策をしていますよね。だから、今の日本では生まれてきた命に「ありがとう」です。しかしフィリピンでは「産んであげた」のだそうです。貧しい環境の中でも産んで育ててあげたのだから、親には絶対服従。親が老いても大切にされる。親という存在は絶対なのだそうです。
「日本では生産者だけが崇められる」という冨田さんの言葉にドキッとしました。みんな必ず老いる時が来ます。そう考えると「ある意味フィリピンのほうが幸せか」と思った私ですが、皆さんはどう考えますか?
裕福な環境に育てられた(私たちを含む)今の子どもたちは、当たり前のように学校に通い、病気になれば病院に行く。住む家があり、食べるものがある。「大切にしなさい」という親の言葉、私たちだって大切にしていないのに矛盾していると思いませんか?
どの国のどんな人も幸せになりたい、裕福になりたいと思うに違いないのです。フィリピンは貧しいからかわいそうとか、衛生状態が悪いから大変とか思うのは間違いだったと気づきました。何が幸せかと思う価値観はそれぞれ違いますものね。
『助産師ネットワークたね』 三嶋 百合子