低年齢のお子様をもつ保護者の方にとって、口腔内に関連したことで特に気になることには大きく2つあるようです。
1. 歯磨きを嫌がる
2. 間食のとりかた
子どものために様々な媒体(雑誌・インターネット・ブログ)を参考にし、実践されているようですが、その情報の多くは理想形で教科書的な内容であり、完璧な口腔ケアを求めているもの、また一方で正しくない情報を載せているものと様々にあります。
保護者の方にとって子育ては毎日のことなので想像以上に大変です。完璧を求めた口腔ケアを毎日継続することはなかなか難しいと思います。例えば、毎日家事を完璧にこなせる人は少ないのではないでしょうか。それをサポートするために便利な家電を活用し、手の抜き所を見つけ、完璧ではなくても合格ラインを維持していることと思います。口腔ケアも同じではないでしょうか。
そこで、今回は、上記2つに関して、合格点(70点)を目指すことにしましょう。
歯磨きを嫌がる理由は主に3つです。
・ 痛いから嫌だ!
・ やりたい事がある!
・ 眠い!
それ以外にも体調が悪いなどがあります。
まず、下の前歯が生え、これから歯磨きをスタートする場合です。歯ブラシはできるだけ鉛筆持ちしてください。歯ブラシは手首を使い優しく、細かく動かします。この時期は、保護者による歯磨き練習にちょうど良い時期です。下の前歯は一番虫歯になりにくい場所なので、気楽にやってください。
上の前歯が生えたら本番です。1歳6か月健診時にみられる虫歯はほとんどが上の前歯ですので、下の前歯ではなく上の前歯から磨き始めます。その際、上唇小帯をこすらないように空いている手の人差し指で隠し、細かく優しくブラシを動かして磨いてください。下の前歯は残り時間で磨きましょう。比率は上8:下2程度で大丈夫です。上の前歯の間が閉じている場合はデンタルフロスを使用して下さい。虫歯になりやすい部分は歯と歯肉の境目、歯と歯の間です。
イヤイヤの時期(2〜3歳)は奥歯が虫歯になりやすいので奥歯から磨き始めてください。比率は上下左右の奥歯7:上の前歯2:下の前歯1程度です。効率を上げたい方は最初に濡らしたガーゼで全体の汚れを拭き取り、細かい部分の汚れを歯ブラシとデンタルフロスでとってください。
つまり、年齢や歯の状態によって虫歯になりやすい場所は変化します。毎日全体をきれいに磨くというのではなく、虫歯になりやすい場所を優先して磨くことで合格点をとってください。
すでに嫌がっている子の場合、歯磨きは痛いことだと認識しているので初めは嫌がりますが、痛くないと分かれば少しずつできるようになります。
夜に母乳・ミルクを飲ませ寝かしつけるという方も多いと思いますが、この場合は朝にしっかり汚れをとっていただければ良いです。焦らず、心にゆとりを持って歯磨きをしましょう。
“間食“と“おやつ“は違います。子どもは大人よりも胃が小さいのに消化する時間は同じなので、大人の3食分を子どもは5回(3回+2回)食べる”補食“と考えてください。一般的に午前10時と午後3時に間食をとりますが、お菓子ではなく、おにぎりや余ったおかず等を食べさせてください。ただ、これも絶対ではなく、時間が無い時や疲れた時などにはせんべいやふかし芋などをあげても大丈夫です。これも合格ラインの70点です。毎回市販のお菓子を食べさせることは不合格ですよ。
以上のように、完璧を求めず心にゆとりを持って子育てをしてください。
(小児歯科シャノワール 山下治人)
(福井市歯科医師会)
※ 本文は歯科医療の観点より記載されております。