みなさん、離乳をどのようにすすめていったらよいか御存知でしょうか?
離乳の進め方には、お口の中の状態と 食べる機能の発達に関係があります。
口の中(唇、舌、歯)がうまく協調して発達していけば、お子さんが上手に食べられるようになっていきます。
それでは、お子さんの成長に応じた離乳の進め方を考えていきましょう。
乳児にとっては、今まで乳首から乳汁を飲んでいたのが、形や固さ、大きさ、食感が違うものが口の中に入ってきて処理することが必要になります。それには、生まれてから哺乳するために必要であった 乳探し(探索)反射、乳吸い(吸啜)反射が弱くなって、自分の意思で哺乳ができるようになってこなければいけません。
乳児の動作の中で、口への働きかけである2か月ごろから始まる「指しゃぶり」、4か月ごろから始まる「おもちゃなめ」は、乳汁摂取の哺乳反射を消失させるためには必要な動作といわれています。 このような動作がさかんにみられてきたら 離乳の開始時期が近付いてきたということです。
おおむね、5から6か月から始まる割合が多いですが、月齢にとらわれず、お子さんの様子をよくみて開始することが重要です。
このほかの目安として、以下の事項を参考になさってください。
離乳開始の目安 |
離乳への準備は、まず授乳時間がほぼ決まり、子どもの1日の生活リズムが落ち着いていることが大切です。 また、おもちゃなめ や 指しゃぶりをするのも口唇の刺激になるので、たくさんさせておきたいところです。
先ほど述べた離乳開始のサインが現れたら、離乳食を始めてみましょう。
まずは、おかゆのすりつぶし、煮野菜のすりおろしなどの半流動食を、1品1さじ与えてみます。おかゆに関しては、粒々をつぶしきれないと嫌がることが多いので、茶こしでこしてポタージュ状にすると食べやすくなります。スプーンを口に運ぶと舌で押して嫌がるようなら、無理強いせずにやめて、翌日にまた試してみることを繰り返します。口元からほとんど出ていた食べ物も、1か月ほどで だんだんと飲みこむことが上手になってきます。
進めていく目安は、 生後5,6か月ころが・・・1日1回 生後7,8か月ころが・・・1日2回 生後9から11か月ころが・・・1日3回 生後12から18か月ころが 食事が中心となって1日3回の食事と間食が1,2回の組み合わせとなり、内容も少しずつステップアップして、大人の食事とほぼ同じものが食べられるようになっていきます。 |
5,6か月ごろ 1日1回が目安
離乳開始の目安は、
「首がしっかりすわっている」 「支えると座ることができる」 「食べ物を見ると、口を開けてほしそうにする」 「スプーンなどを口に入れても、舌で押し出すことが少ない」などの様子がみられるようになったときで、機嫌の良い時間帯に始めます。
ひざに抱いた子どもの体を少し後ろに傾けるようにすると、食べさせやすくなります。
7,8か月ごろ 1日2回が目安
2回食にするときは、どちらか1回は軽めにして回数に慣れるようにします。
食べさせるときは、平らなスプーンを下唇上にのせ、上唇が閉じるのを待ちます。
口の中でつぶした食べ物を飲み込みやすくするために、とろみをつけるとよいでしょう。
中だるみの時期で食べなくなることもありますが、焦りは禁物です。まだ栄養のほとんどを母乳や育児用ミルクからとっているので、嫌がるときは無理には与えずに、食事時間は5~10分くらいで切り上げます。いろいろな味や舌ざわりを楽しめるように、食品の種類を増やしていきましょう。
大人は速いテンポで与えてしまいがちなので、よく噛むことを覚えていくためには、ゆっくりと話しかけながら子どもの口に運びたいものです。
乳前歯が生えてきます またこのころには、個人差はありますが、乳前歯が生えてきます。それにともなって顎も大きくなり始め、口の中の大きさも広がっていきます。 乳前歯が生え始めると、さかんにおもちゃなどの食べ物以外のものを口に運ぶようになります。いわゆる「歯固め」の時期なのですが、これは自分の手に持った物を口に運び、口の中に外界の物を取り入れるといった行為であり、「自分で食べる=自食」の準備にもなっています。 |
9~11か月ごろ 1日3回が目安
1日3回のリズムを大切にします。
9か月以降は、鉄不足にならないように、赤身魚、肉、レバー、小松菜などを使用します。調理が難しいときは、市販のレバー入りベビーフードやフォローアップミルクを使用します。
食べさせ方は、丸み(くぼみ)のあるスプーンを下唇の上にのせ、上唇が閉じるのを待ちます。また、軟らかめのものを前歯でかじりとらせる準備もします。
そろそろ、大人の食事からの取り分けが可能になるので、味つけを薄味にして家族と一緒に食べると、子どもなりに食事を楽しむようになります。
遊び食い、むら食い、好き嫌いなどが始まります。いままで与えられるままに食べていたのが、自己主張を始める時期です。できるだけ食事に興味をもたせるように、テレビを消す、おもちゃは片づけるなどして、食べる環境を整えます。また、大人も一緒に食べながら、子どもが食べることに集中できるような言葉かけをします。
手づかみ食べも始まりますが、食事に興味をもたせるには大事なことで、手づかみできる献立の工夫もしましょう。
12~18か月ごろ (1歳から1歳半ごろ)
外遊びなどで空腹にさせて、生活リズムはメリハリを心がけます。1日3回の食事と捕食となるおやつを組み合わせて、エネルギーや栄養素の大部分が母乳や育児用ミルク以外でとれるようになり、ある程度の固さのものが食べられるようになると、離乳は完了に近づきます。
手づかみ食べを十分にさせたい時期です。大人がこぼすのを嫌がっていつまでも食べさせたり、頻繁に口元や手を拭くと、子どもが手づかみを嫌がる様子がみられることがあるので、1~2品はあえて手づかみできるものを用意したいものです。また、子どもが存分に手づかみ食べできるように、マットを敷くなど汚れても気にならないような工夫をするとよいでしょう。
十分な栄養素を補うためには、献立の内容をバランスのとれたものにすることです。さらに、咀嚼を学習するには、1汁2采といった具の多い汁ものと主菜、副菜を組み合わせたり、下記の表を参考にしていろいろな食材を組み合わせたり、食感の違いや味つけの違いなどをたくさん経験させるとよいでしょう。
離乳完了の目安は、いままでの母乳や育児用ミルク主体の栄養摂取から、
形のある食べ物をかみつぶして食べることができるようになり、必要な栄養素の大部分を食事からとれるようになったときです。 具体的には、1日3回の食事と1~2回の間食がとれるようになってきた、牛乳や育児用ミルクが コップで1日200~300ml くらい飲めるようになったころです。
最後に お子さんの発達には個人差があります。ここでは一つの目安として月齢で表示しましたが、大事なことは 本人の発達段階に応じて 離乳食の形態を考えてほしい、ということです。 もしお子さんが、ここに示す月齢のとき、食べられるはずのものが食べられないとしても、焦って離乳食の形態を難しくしないでください。 噛まずに丸飲みをする癖がついてしまう場合もあります。 お子さん本人の食べる機能に合わせてあげることが、最も大切なことです。 |
(中村歯科クリニック 中村 克宏 院長)
(福井市歯科医師会)
※ 本文は歯科医療の観点より記載されております。