舌磨きとは、その名のとおり舌を磨くことです。
お口の中のお掃除でも舌磨きはあまりなじみがないかもしれません。
について考えてみましょう。
まず、舌を見てください。鏡を見ながら口を開けると、下あごの歯並びの内側にあり、前後左右に動かすことができます。食事をしたり、飲み込んだり、言葉を話したり、味を楽しんだりと様々な役割を果たしています。この見えている部分は舌背部といわれ、健康な色はピンク色です。触ってみると意外に舌の表面はざらざらしています。
しかしながら、すべての方の舌背部の色がピンク色ではなく、白色、黄褐色、褐色、黒色、赤色などの方がいます。まず白色や黄褐色は、食物残渣、唾液成分、微生物、剥離上皮などが苔状に舌の表面に堆積したもので、舌苔(ぜつたい)といわれます。褐色や黒色の場合は体の免疫機能の低下や、薬剤の服用などによって起こります。赤色では、貧血によるもので、舌背部の表面はつるつるしてきます。このように舌は体調などによって色や表面の性状が変化します。
舌磨きとは、舌背部の表面に溜まった汚れ=舌苔を取り除く清掃のことです。舌苔は、唾液の量が少なくなったり、さらさらな唾液からねっとりした唾液に性質が変わることによって、口の中の乾燥が起こり形成されます。また舌の運動や嚥下の障害による自浄作用の低下も考えられます。舌苔は堆積量が多くなるにつれて、白色から黄褐色へ変化し、この舌苔から発生するVSC(揮発性硫黄化合物)が口臭の原因になることがあります(図1)。また舌苔にいる細菌は舌の動きによって上や下の歯や歯肉に付着し、歯磨きをしていても、虫歯や歯周病の原因となる細菌の供給源となります。そのため取り除くことが口の中の健康につながることになります。しかしながら最近は必要以上に舌磨きによって舌苔を取りすぎることが指摘されています。取りすぎると、舌にある味覚をつかさどる部分が傷つくことによって味覚障害を引き起こしたり、逆に短時間で汚れが付きやすくなる場合がありますので要注意です。実践される場合は正しい方法で行いましょう。
最近は、舌磨き用のブラシ(舌ブラシ)が市販されています。また普通の歯ブラシの中でも軟毛ブラシで可能です。ブラシを使わない場合はガーゼでも行えます。舌の奥から手前に向かって弱い力で動かします(図2)。数回行えば十分です。奥に入れすぎると吐き気がでますので注意しましょう。また乾燥した舌に行うと傷つきやすくなりますので、うがいをしたり、ブラシを濡らしてみてください。2%重層水を併用すると取れやすくなります。また一度の舌磨きで汚れがすべて落ちるわけではありませんので数日に分けて行うとよいでしょう。口内炎や傷のある部分は触らないようにしましょう。舌の色が褐色、黒色、赤色などの方は、医師、歯科医師に相談してください。自分では、なかなか舌を観察したり触ったりすることはないかもしれませんが、チャレンジしてみてはいかがでしょうか!
(あおば歯科 島田 真弓 先生)
(福井市歯科医師会)
※ 本文は歯科医療の観点より記載されております。