みなさんご心配のように、指しゃぶりのような弱い力でも習慣的に長時間作用すると歯並びに影響がでます。
具体的には前歯がかみあわない開咬、下あごより上あごが著しく突出する上顎前突、いわゆる出っ歯や、下の前歯が舌側に倒れるなどの状態になることが考えられます。
指しゃぶりは骨格や舌、唇の働きなどにも影響します。この場合、歯並び以外にも食事や発音のようなお口全体の機能に関連した問題がでる場合もあります。
赤ちゃんのかわいらしい指しゃぶりのしぐさは見ていてなんとも癒されますよね。
指しゃぶりは年齢によってその役割が異なります。
赤ちゃんはお母さんのお腹の中で既に指しゃぶりしていることが知られています。これは哺乳のための大事な練習になっています。また生まれてからの指しゃぶりは自分の手と目、手と口の協調運動の発達に大事な役割を果たしています。食べ物を見て手で口に運び食べる練習です。指を吸うことで哺乳がわりの満足感や気分鎮めを得る効果もあります。離乳期を過ぎ噛むことを覚えると、指しゃぶりからは不安や緊張をやわらげようとする精神的な役割が大きくなります。
このため通常指しゃぶりは1~2歳をピークに、卒乳の時期、言葉の理解・表現の発達やお友達ができたりなどの社会性の発達にともない減少していきます。子どもさんの成長、発達にあわせて指しゃぶりが習癖化しないようにサポートしていきましょう。
指しゃぶり以外にも同じような歯に力が加わる癖としては下のようなものがあります。
おしゃぶり
他にもおもちゃ、タオルや鉛筆などを噛む癖。→指しゃぶりと同様な影響があります。
咬唇癖
唇を噛む癖。→上唇を噛めば反対咬合、下唇を噛めば上顎前突や下顎前歯の舌側傾斜となります。
弄舌癖
舌を突きだす癖。→前歯の唇側傾斜などの歯並びの悪化。歯が生えそろった後も食べ物を飲み込む時に舌を突きだす癖はお口の機能に問題がでる場合があります。
咬爪癖
爪を噛む癖。→歯の磨耗や歯並びの悪化。指にもタコができたりします。
その他、お口の機能に影響する癖として、口呼吸があります。鼻での呼吸に問題がなければやめたほうがよいでしょう。
指しゃぶりは幼児期から言葉や理解力の発達にあわせて徐々にやめていくようにサポートしましょう。下の子が産まれてから上の子に指しゃぶりが再発したという話しをよく耳にすると思いますが、子どもの不安や寂しさが指しゃぶりの原因という場合もあります。
子どもさん自身に自覚、努力させるだけでなく、十分なコミュニケーションとスキンシップが大切ですよ。それでもうまく直らない場合は、最近では指しゃぶりをやめるための苦味があるマニキュアなどの商品もあります。お母さんはお子さんやご家族のことでいろいろ大変なのです。無理してストレスをためずにお気軽に歯医者さんをご利用、ご相談くださいね。
(村崎歯科医院 村崎敏也 先生)
(福井市歯科医師会)
※ 本文は歯科医療の観点より記載されております。