公園などで子どもたちが元気に遊ぶ姿は親御さんたちにとってこの上も無い幸せな思いをいだかせるものでしょう。ただ、そのとき子どもさんがケガを負われたとしたらいかがでしょうか。今回は、そのような折に知識としてお持ちいただければ役立つと思われる知識を、特にお口のケガに的をしぼってお話しいたします。
お口のケガは大きく二つに分けられます。ひとつは硬い組織のケガ。もうひとつは軟らかい組織のケガです。お口の中の硬い組織としては、「骨(上下顎骨)」、「歯」があります。
軟らかい組織は「歯ぐき」、「舌」、「頬の内側(頬粘膜)の粘膜」、「上あごの粘膜(口蓋)」、「唇(口唇)」などがあります。
軟らかい組織のケガ
お口の中のケガの特徴に、他のケガと比較して多量の出血がみられることがあげられます。
これはお口の中は血管が多く、しかもそれら血管が比較的粘膜のすぐ下の浅い部分にあるため、小さな傷からも多量の出血が起こしやすいためでしょう。また、お口の中にはたえず唾液(ツバ)が存在し、その唾液に血液が混じることにより多量出血にみえるということもあると考えられます。
対処法としては、まず洗浄・消毒が必要です。これによりどこから出血がおきているかがはっきりします。次に止血です。止血法としては清潔なガーゼかそれに近いもので出血箇所に圧迫を加え止血する「圧迫止血」が第一です。ただし、キズ口に砂や他の異物がある場合には、洗浄・消毒後そのまま専門医に受診したほうが良いでしょう。
硬い組織のケガ
骨のケガとしてはいわゆる「ヒビ(不完全骨折)」と「骨折(完全骨折)」などがあります。いずれにしても痛みの軽減をはかるためその箇所を安静に保ちできるだけ早く専門医を受診することが必要です。
歯のケガについて
次に歯のケガについて。歯の場合は「破折」「脱臼・脱離」や「埋入」などがあります。
「破折」「脱臼・脱離」により歯や歯の一部がお口の外にでてしまった場合には、清潔な流水でそれを洗浄し乾燥しないよう注意して歯科医院へ持参してください。利用可能であれば「破折」の場合には「接着」を、「脱臼・脱離」場合には「再植・固定」を行い、可能な限り歯の保存に努めます。「埋入」の場合には適切な位置に戻して固定をおこなうので、現状をそのままで歯科医院を受診してください。
いずれにしましても、外傷をおった歯は神経の生死を見極めるため長期の経過観察をおこなうことが必要となります。
いずれにしましても、ケガをしたときの乳幼児のお子さんは痛みとショックでひどく泣き喚いて興奮状態にあることが多いと思います。そのような時は保護者のかたが、冷静に対応することが大事になってくるでしょう。ただし、ケガを恐れて遊びたいさかりのお子さんを部屋の中でばかり遊ばせることはいかがなものでしょうか。それもやはりお子さんの成長に関してさまざまな問題を惹起してしまう恐れがあるのではないでしょうか。どうかお天気の良い日などにはお子さんを思いっきり遊ばせてあげてください。
(福井市歯科医師会)
※ 本文は歯科医療の観点より記載されております。