「虫歯になりにくい健康で丈夫な歯にするにはどうしたらいいのかな?」と質問すると、「それはカルシウムを充分とることです。」と答えが返ってくると思います。
ママさんがお子さんに「虫歯を作って歯医者さんに行くのが嫌なら、カルシウムをとりなさい。牛乳を飲みなさい。小魚も食べなさい。もっと歯みがきをしっかりしなさい。」としかっている声が、歯医者さんの待合室から、しばしば聞こえてきます。しかし、それでは本当は遅いのかもしれません。
人間は、乳歯がはえて、そして永久歯にはえかわってゆきます。
乳歯は、生後8,9カ月ではえはじめ、2才のお誕生日を迎えるころには、20本はえそろいます。実は、妊娠に気づく2カ月頃には、お腹の中の赤ちゃんに乳歯の歯のタネができています。そして、妊娠中期には、歯のタネにカルシウムが取り込まれて歯が形づくられているのです。丈夫な乳歯を作るために大切なのは、妊娠中のお母さんの栄養なのです。
永久歯について言うと、これも、妊娠3,4カ月でお腹の中の赤ちゃんに歯のタネができはじめ、オギャーと生まれるころには、最初にはえてくる6才臼歯の歯のタネにカルシウムがとりこまれ始めます。永久歯28本(おやしらずは除く)は小学校の期間に、乳歯に代わってはえでてくるので、なんと6年も前の授乳期の栄養が、とっても大事なのです。授乳中のママさんのカルシウムの補給が、お子さんの永久歯の質の良否を決定づけるスタートラインなのです。
勿論、その後もカルシウムは歯のタネにとりこまれ、緻密な歯を形成してゆくので、離乳以後のお子さんのカルシウムの摂取も大事です。
カルシウムは1日にどれだけ必要かというと、幼児で400mg、成人女性で600mg、妊娠期のママさんには1000mg、 授乳期のママさんには1100mgが必要とされています。乳製品、小魚、海藻類、大豆、和野菜には多くのカルシウムが含まれます。牛乳1本飲むだけで、ほぼ200mgのカルシウムがとれます。日頃、みなさんのおうちでは和食と洋食、どちらの食事が多いですか?お子さんに人気なメニューは、カレーライス・ハンバーグ・オムライスなどの洋食になりがちですね。ここに比較的カルシウムを摂取しやすい和食のメニューを取り入れること、さらにその食事に牛乳1本をプラスすることで必要なカルシウムが充分確保ができます。
また、単にカルシウムだけを多くとれば良いかというとそうでもありません。強い歯をつくるにはカルシウムは大事な栄養素ですが、たんぱく質やビタミンと一緒にとらなければ、体に吸収されにくいのです。歯の基礎をつくる良質のたんぱく質(卵・乳製品・魚肉)、エナメル質をつくるビタミンA(緑黄色野菜・バター)、象牙質をつくるビタミンC(淡黄色野菜・果物)、歯をかたくするカルシウム(乳製品・小魚・ひじき・大豆・ごま)リン(肉・卵・米)、そしてカルシウムの代謝をよくするビタミンD(卵黄・バター・牛乳)これらの食材をバランスよく一緒に摂取することが必要です。逆にインスタント食品やレトルト食品、スナック菓子や清涼飲料水などに多く含まれている食品添加物のリン酸塩は体内で一定量を超えるとカルシウムと結合し体外に排出され、カルシウム不足を引きおこします。甘いもののとり過ぎも歯に悪い影響を与えるので注意しましょう。日頃から天然の素材によるバランスのよい食事を心がけることが大切です。
(福井市歯科医師会)
※ 本文は歯科医療の観点より記載されております。
関連情報
- 福井市歯科医師会(新しいウィンドウが開きます)